【第一章】津波のように押し寄せる不安。(希望0%)
西新宿の路地裏に、どんな人でも起業成功させてしまう不思議なバーがあった。
停まり場のカウンタで飲んだくれている二郎。愚痴をこぼす。
このまま今の会社にいても先は見えてるしな〜。
かと言って転職しようにも、何の取柄も資格もないし。
リサーチなんて部署、どこの会社にもあるし地味だし。
起業した先輩もいるけどそんな才能も勇気もないし・・・ 。
ただただ飼い殺されて終わるのかな〜。
夏奈ちゃん、俺、どうしたらいいんだろうね?
そんな事無いと思いますよ~。二郎さんだって起業できますよ~
そう声をかけてきたのはこの店のママ夏奈(なつな)。
もし良かったらもう一軒行きません。
今日はもう店閉めちゃいますから一緒に呑みましょ!
そうして夏奈に連れられてきたのが、西新宿“日の出商店街”にある、
“日本の酒(さけ)バー” インディペ。
< 重厚なインディペの店内 >
重厚そうなインテリアとズラリと置かれた酒が本格を思わせる。
マスター川守は寡黙で多くを語らないが、夏奈とは何か深いつながりがありそう。
バーにしか見えないのに、マスターの川守は圧倒的に日本酒の造詣が深い。
夏奈とは、とある日本酒の蔵元での、蔵元見学で出会ったらしい。
毎日、日替わりで「選りすぐりの日本の酒」を出している。
本日のおすすめは宮城の銘酒「浦霞(うらかすみ)」。
夏奈に紹介され、酔った勢いもあり、マスター川守に思いの丈を語る二郎。
特にクライアントであり憧れの存在である、
飲食店チェーンを率いる高木社長みたいになりたいと熱く語るが、
とても自分には無理!と決めつける。
二郎は高木社長の凄さを語るばかりで、自分の事は何も語らない。
言わないことは聞こえない。
いつも言ってるだろ!と言う事の意味は、「時々言うことがある!」であり、書いてあるだろ!の意味は、「言外に 読み取ってくださいよ!」です。それでは言ったことにはならないし、伝わる筈もありません。
言わないことは聞こえないんです。
闇夜のカラスと言う言葉があります。
真っ暗闇でいくらカーカーと鳴いても、どこにいるかは分からない。
ちゃんと居場所を示すことが大事です。
「うまい料理を出しておけば、客は来る!」
と、看板も出さない店が潰れるように、
「特殊な技術を持っているから、宣伝なんてしなくても患者は来る!」 とうそぶいている整体師の院が消えていくように・・・
まずはちゃんと伝える事。
言ったつもり!は何も言っていないのと同じなんですよ。
半信半疑で店を出る二郎、優しく見守る夏奈。
自分の強みは、自分で考えても見つからない!
夏奈です。マスターは早速、二郎さんの強みを見つけちゃったようですね。
ここでとても大事なことをお話ししますね。
実は、明らかな強みを持っているにも関わらず、それにまったく気づいていない人と言うのがほとんどです。
言い換えれば、自分の強みにちゃんと気づける人が稀(まれ)ってことですね。
これを私は「自分の強み、自分だけが気づけない法則」と呼んでいますが、本当に「自分だけが気づけない」んです。
逆に言えば、他人の方が自分の事は良く見えるし気づきやすい。
コーチングなどで、聞き役のコーチがクライアントの強みを次々に見つけたりするのもこの法則のお陰です。
特に二郎さんはずっと同じ仕事をやってきています。
本人にとっては変化のない、凡庸な日々かもしれません。
ですが、クライアントにとっては会うたびに新しい発見、示唆をくれる存在。
彼ともっと話したい、彼の意見をもっともっと聞きたい。
そう感じているんです。
クライアントは、二郎さんが生み出す新しい情報に高い価値を見出しているんですね。
高木社長からの評価が高いのも、二郎さんのそんな「発見力」。
つまり「自分たちが見つけられていない大事なテーマ」に気づき、教えてくれる能力を持っているからこそなんです。
自分の強みが分からない!何が売り物か?まったく見えない!
そんな場合は、誰かと言葉のキャッチボールをしてみるのはとても効果的です。
思わぬ発見、思わぬ価値の掘り起こしが出来ると思いますよ。
仕事は自分だけでやってはいけない!
川守です。
私が何者か?は置いておいて(おいおい明らかになります)起業に際して、とても大きな勘違いをしている人が多いんです。
例えば私自身、数年前に「日本の酒バー」を開いたんですが、ずっと他人のチ カラで商売をやって来ました。
もちろん、カクテルを作ったり、料理を作ったりと言う行為は自分でやっていますよ。
ですが、メインの商品であるお酒も食材もすべて他の誰かが作ってくれたものです。
私はその「他人の作品」を仕入れて、私なりのやり方で販売しているだけ。
つまり、大雑把に言えば「仕入れて売っているだけ」なんですよ。
ですが、二郎さんもそうなんですが、どうも起業と言うと「全部、自分でやらなければいけない!」と思い込んでいる人がとても多いんです。
言うならば私が、お酒を自分で作り、魚を育て、家畜を育て、野菜を育てているようなもの。
それでは逆に商売は成立しません。
誰かが作ってくれたものを仕入れて売る!と言うのは決して悪い事でも間違った事でもなくて、ビジネスの基本です。
それに気づけば起業なんて、無限に可能性があると言う事に気づきます。
仕入れたものに、自分なりのカスタマイズをほどこす。
ただし、ポイントがあります。
それはカスタマイズです。
他人が創ったものを単に仕入れて売るだけではただのブローカーです。
そこに自分らしさはありません。
自分なりの工夫を加えて、お客さんにとっての魅力を付加して販売する。
だからこそ、高く売れたりファンが生まれたりします。
それが出来なければ果てしない値下げ合戦に巻き込まれ、いずれは死に至ります。
値下げ合戦とは「緩やかな自殺」なんです。
決してやってはいけません。
それからもうひとつ。
誰が売っているのか?と言うのも大事です。
仮に同じような商品でも、売る人によって価値が変わってきます。
「あの人がよいと言っているのなら間違いないだろう!」
「あの人は今一つ信用できないから買わないで置こう!」
そうした判断をお客さんはするのです。
いわば売る人の「価値観」とか「こだわり」、人柄や信念などの総体です。
売る人そのもので差別化する。それがブランド。
この総体のことをブランドと言います。
ブランドは単なるデザインとかコピーの良し悪しではなく、売る人そのもの。
何故それを扱うのか?と言う根っこの部分です。
周囲を見てください。
成功している会社や店には必ずその「根っ子」があるはずです。
② 仕入れたものに、自分なりのカスタマイズをほどこす。
③ 売る人そのもので差別化する。それがブランド。